近年は女子プロゴルフ界が、美人プレーヤーの相次ぐ登場などで注目されることがありますが、その舞台でおこった不祥事を知ることで、彼女たちの悩みを垣間見てみましょう。
ルール違反に関わる不祥事
2017年、女子プロゴルフツアーでは、ルールを破ってしまうことによって何らかのペナルティが課される不祥事が計12件起こっています。
ゴルフはマナーに厳しいスポーツで、ほかの選手の迷惑になる行為や、時間を無駄にする遅延行為などに対して細かなルールが定められています。
最も多かったルール違反はクラブの本数超過に関わるものです。
14本以内のクラブでラウンドを開始することが定められていますが、誤ってそれ以上のクラブをバッグに入れてしまったというものです。
他にみられる不祥事では、天候不順によって設けられた特別ルールをよく理解していなかったために、規定に反する行動をしてしまうケース、クラブを前のホールに忘れてきて取りに戻ったことによって、遅延行為とみなされてしまったケースなどがあります。
こうしたルール違反には、打罰とよばれるスコアへのペナルティが課されます。
幾つの打罰が加えられるかはその時の状況によって異なります。
こうしたルール違反という不祥事は選手にダメージを与え、そこから調子を崩してしまうことも少なくありません。
しかし、吉田弓美子選手は2017年のスタンレーレディスゴルフトーナメントにおいて、キャディのミスによるルール違反から1打罰のペナルティを受けたにも関わらず、見事な逆転でこの大会を制しました。
ルール違反という不祥事は、ゴルフというスポーツにドラマを生むスパイスになっているのかもしれません。
恋心がもたらした不祥事
二つ目の不祥事は、2015年の中京テレビ・ブリヂストンレディスオープンで起こってしまった惨事から。
女子プロゴルファーの藤田光里選手とそのキャディの大江順一氏があろうことかラウンド中に大ゲンカをしていたというのです。
この一件によって、日本女子プロゴルフ協会は藤田プロに厳重注意、大江氏には12日間の職務停止の処分を与えました。
実はこの二人、恋愛関係にあったそうで、その関係性の変化が今回のような醜聞へとつながってしまったようなのです。
女子プロゴルフ界では、キャディが選手と恋仲になることはご法度というのが暗黙の了解事項になっているそうで、その掟を破ってしまった人には白い眼が向けられるそうなのですが、実のところはというと、恋愛関係になるキャディと選手も少なくないといいます。
実際に夫婦になったキャディと選手も何組かいます。
恋愛がプラスに転じて、プレーに好影響をもたらせば言うことなしですが、そうした関係になることで、プレーに支障が出るといった問題が生じたり、あるいは恋愛関係になることで関係がぎくしゃくして契約解消となる可能性もあるかもしれません。
プロゴルフ界はとてもストイックな世界で出会いも少ないようです、キャディと恋仲になるのは必然、なのかもしれませんが、恋心とはどこの世界でも時に厄介で、不祥事の元ともなりかねません。
稼ぐ人は一握りゆえの不祥事
三つ目のお話は、悲しいことに事件になってしまった不祥事です。
2012年、女子プロゴルファーの西村友希が窃盗の容疑で逮捕されました。
クラブハウスのロッカーから客のクレジットカードを盗み出し、繰り返し使用していたということです。
彼女は2008年にデビューしましたが、これまでの四年間で稼ぐことができた賞金は86万円だったそうです。
どうしても、テレビで放映される何千万もの賞金に目がいきがちですが、実際に1000万円以上の賞金を一年で稼ぐことができるのは、僅かにトップの50人程度だそうです。
それに対して、登録されている女子プロゴルファーは約1000人。
そして、一年間で一円も賞金を稼ぐことができないプレーヤーは、なんと800人あまりに及ぶというのです。
ほんのわずかな実力者には華やかな生活があるのかもしれませんが、その裏側には厳しい生活を強いられる多くの選手たちがいるのです。
そして、実力者たちにとっても、勝ち続けなければならないプレッシャーが存在しています。
年間賞金ランキングで55位以内に入らなければ、シード落ちとなり、翌年はコンスタントにツアーに参戦することもままならなくなってしまうからです。
女子プロゴルファーのお金に関わる問題から生じた不祥事をご紹介しました。
シード権を持つ選手が暴言を吐いた不祥事
四つ目の話は、笠りつ子選手が起こした暴言に関する不祥事です。
それは2019年10月のマスターズGCレディス初日に起こりました。
スタート前、ストレッチのため大浴場の脱衣場へ行った際、通常はコースから提供される「ストレッチ時に床に敷くバスタオル」が無い事でスタッフと言い争いとなり、「頭が固い。死ね」と暴言を吐いた事件です。
本人への処分は、LPGAからは厳重注意と3日間の新人セミナーへの参加、加えて本人が事実を認めて謝罪し、シーズン残り試合を自主欠場し一段落しました。
この暴言自体は、理由がどうあれ決して許されるものではなく、本人が謝罪している通り、真摯に自分と向き合う事を期待します。
がそれ以上にこの事件の後味が悪いのは、貸し出したタオルが返却されない「タオル泥棒」が後を絶たないため、コース側と運営側が協議の末タオル提供を取りやめたという背景にあります。
シード権を持つ選手達がそこまで金銭的に追い詰められているはずも無く、出来心かも知れませんが、小さい頃からゴルフ一筋で人間形成の場が無いまま大人になった選手も増えてきたと言われる今日この頃、競技の第一線から退いた後も普通の人間として生きるための人間教育の場を、LPGAなどが提供する重要性が増してきているのは確かです。
不祥事にめげずに歩む女子プロゴルファーたち
女子プロゴルファーたちの悩みを少しでも知ることができたでしょうか。
強靭な肉体と精神をもつプロスポーツ選手である彼女たちですが、ルールに縛られ、恋愛に悩み、生活の大変さも抱えています。
そして、不祥事のニュースは彼女たちを少しは動揺させることでしょう。
それでも、厳しく過酷な環境の中で戦いながら、私たちを魅了し感動させてくれる彼女たちを今までとは少し違った気持ちで応援してみませんか。